12月2日
午前5時 まだ空には星が残っている 吐く息が白い。
待ち合わせの場所で待っていると時間通りに車はやってきた。
早速、運転を代わり目的地の新潟へと向かう。MJの祖母の家に、嬉恥ずかし一泊旅行だ。
朝早いので車も少ない。
通常なら、中央道を降りて練馬から関越道に乗り入れるコースが一般的だと思うが、高速料金節約の為、東久留米を抜け、所沢インターから入った。
途中 トイレタイムでサービスエリアで休憩しただけで、一路新潟を目指す。
川端康成で有名なトンネルに差し掛かる。
「トンネルを抜けるとそこは雨国だった。」
群馬の天気とは一変して、どんよりと重たい雲が垂れ下がっている。おまけに雨まで降り始めた。 遠くの景色が見えない。
燕三条のインターで降り、新潟で一番古いという神社へ向かった。
その神社は平野ではなく山にあるため、近づくにつれて、ますます天気は悪くなるばかりだ。
まだ朝の10時だというのに、夕方の様に暗い。
「どこからか、夕ご飯の支度のにおいがしてきてもおかしくないね。」と MJ。
「ホントだね。 カレーの匂いがしてきたりして。」 と私。
神社に駐車場に車を停め天気が回復するのを待つが、一向に良くなる気配がない。それどころか、雷までなり始めた。
車に閉じ込められたままだが、この状況もまんざら悪くない。
私が小学生の時に叔母からかけられたなぞなぞを出してみる。
「東北の若夫婦が寒い夜に二人ですることで、言葉の始めが『せ』で終わりが『す』 て、なあーんだ?」
「・・・・・。」 MJ頬を赤く染めて下を向いている。
「まさか直球じゃないですよね。」 と ピエールが横から口を出す。
あっ、そうそう、いい忘れていたけど車には、男二人に、女性三人(MJ・たしろのまみちゃん・こあかねちゃん)が乗っている。
二人だけで旅行に行ってると思っている皆さん。残念でした。
妻帯者の私が、カミサン以外の女性と二人きりで泊りがけの旅行をするはずがないじゃないですか。全くもって、非常識なんだから。
答えは 「せけんばなす」でした。
と、ここで。
神社詣ではあきらめようかと思っていると、雨脚が弱まってきた。
意を決して車の外に出る。
すると不思議なことに、雨がやんだ。私たち一行を祝福しているかのようだ。
今度受験を控えている、映画祭のメンバーの子供たちの為に絵馬に合格を祈願してくれた。何て心優しい人たちなんだろう。 「いい男が現れますように。」と書きたいところをぐっとこらえて他人の為に祈念してくれるなんて。
境内の中には各地から集められた天然記念物の鶏のケージがある。
それを観ていた女性陣。「美味しそうー。」 天然記念物に指定しなくてはならないほど数が減るわけだ。
おなかがすいてきたので、寺泊へと向かう。
車に乗り込むと、今まで止んでいた雨が再び降り始めた。ホント不思議だ。
ナビが寺泊の近い事を知らせている。
私達を歓迎しているのか、諸手を上げている像が見えてきた。
文化放送でコマーシャルが流れている「角上魚類」の2階でやっと昼飯にありつけた。
それぞれ海鮮のメニューを頼む。食事代一人当たり約1500円。 こんな高い昼食を頼めるのも旅のなせる業なのか。
さすが港町。海の幸が山盛り売られている。
しかし、北海道の物が多いのはなぜだ。
おなかが一杯になった一行は荒れ狂う日本海を見るため海岸に向かった。
ピースではなく銅像のポーズと同じように両手の指を一本ずつ突き出している。
なぜ日本海は艶歌が似合うんだろう。MJ以下みんなで海に向かって艶歌を歌う。「波の谷間に命の花がー・・・♪」
さすがに「島んちゅの宝」やレゲェーは似合わない。
今度、みんなでカラオケに行く機会があれば、「艶歌」しばりで歌う事を約束した。
国籍不明のテレビが流れ着いていた。付着しているフジツボが漂流の期間が長かった事を物語っている。
沖合いの雲から真っ黒な筋がいく重にも降りている。雲の中を轟音とともに稲光が走る。
このままでは危ないと判断した私はみんなに「早く車にもどれー」と叫ぶ。私につられて、全員が走った。間一髪、みんなが車に乗り込んだとたんにすごい雨が降り始めた。またもや雨にぬれずに済んだ。
さあ今度は温泉だ。
車を北に向けて走らせる。
どんどんと山の中に入っていく。30分ほどで温泉についた。ひなびた温泉だ。私はこういう温泉が好きだ。
タオル込みで入浴料500円。 男湯は殆ど貸切だった。
設備が老朽化しているせいか、蛇口のボタンを押してもちょろちょろとしかお湯が出ないところがあるかと思えば、ずーと出っ放しになって、桶の3杯分ぐらい出てから止まるものもある始末。
お湯の温度も一定せず、冷たい水かと思いきや、いきなり火傷しそうなお湯が出たりする。それでも露天風呂もあり、お湯は最高だった。
なめると心なしかしょっぱい。 髭剃り後がしみる。体にとてもよさそうな気がする。
一時間後にお風呂から出た。
次は新潟の駅へと向かう。途中、「ロシアチョコレート」の店に立ち寄り、女性達はそこでしこたまチョコレートを買っていた。詳しいことはMJのレポートを待つとして、急ごう。おなかがすいてきた。新潟名物「へぎそば」を食べなくては。私はまだ一度も「へぎそば」なるものを口にしたことがない。
車を駅前の駐車場に停めて、あらかじめ「るるぶ」で予習しておいた店に入る。
店は空いていた。なぜか正面の壁に大きなべっ甲亀の剥製がかかっている。
メニューをみてお目当ての「へぎそば」と天ぷらを全員で頼んだ。私はメニューにある「菊のおひたし」を食べたことがないと話したら、それも頼もうと言うことになり、全員で食べた。通常より大きめな小鉢に結構な量が入っている。ポン酢仕立てで美味しい。「へぎそば」も天ぷらもあっというまに平らげた。 普通のそばとは食感が違い、麺に腰と粘りがある。美味しかった。実をいうと、四国の直島で一度食べたことがあったのをこの記事を書いているときに思い出した。みんな、はじめてと言うのはウソでした。すみません。
旅をするときは必ずそこのそばを一度は食べると決めている。新潟のそばが美味しい事を確認できた。
腹ごしらえを終えた一行は、かって知ったるピエールとMJに導かれるまま商店街のなかにあるスーパーでお酒と、明日の朝ごはんの食材を仕入れた。車に戻る途中「やまんばギャルとギャル男の一行とすれ違った。 彼達の美的センスは私にはわからない。ましてや、東京ではやっている事を新潟ですることもないのにとMJと話した。彼女も同意見らしい。
さあ、もう一息だ、一時間で今夜の宿に着く。
雨は相変わらず、降り続いている。
車は繁華街を抜け出し、段々と明かりがまばらになってきた。
ピエールの運転が慎重なせいか、制限速度ぴったりの速度で走っている。
後ろを見ると車が数珠のようにつながっている。
ナビが左に曲がるように指示している。
車は一段と明かりの少なくなった道路に進む。
「あっ、そこ、そこ、そこを曲がって。」MJが慌てて声を出す。車は車体を大きく揺らし左に曲がった。
「もう着いたよ。 そこを右に入っていって。」
彼女が指し示したところは、道路に平行して大木が並び、家の門らしきものは全く見えない。
スピードを落とし、目を凝らしていると大木の間に車一台がやっと通れそうな空間がある。
それが敷地の入り口らしい。
全く林というか、森の中ではないか。
入り口から40m程すすむとやっと建物が見えた。
暗くてよく見えないががっしりとした骨太な民家だ。
早速荷物を車から運びいれ、MJに建物のなかを案内してもらう。
「犬神家の一族」のロケでも出来そうな家だ。
照明が暗くてわかりづらいが、梁などは2尺(約60cm)もあり、柱は6寸(約18cm)と一般の住宅では考えられないぐらいにビッグサイズだ。 新潟で地震があったとき、びくともしなかったらしいが、うなづける。
通常の数奇屋建築だと長押があるのだが、この建物にはない、その代わり本当に槍を置いていたであろう金物がケヤキで出来た梁に取り付いている。 多分この梁は、この家を立てる際に、ここに生えていたケヤキの大木を使用したに違いない。そこに生えている木を使って建物を建てるということは、建築的にものすごく理想だ。なぜなら、それは、そこに生えている木はその土地に適しているということだからだ。
それぞれ、着替えて、女性陣は化粧を落とし、つまみの準備へと取り掛かる。
寺泊で買ったイカの一夜干しをあぶる。
みんなで、ビールを開け。「かんぱーい!」
今回の企画を立ててくれたMJに皆で感謝した。
そして、酒池肉林の宴は夜明けまで続くのであった。
磯者
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