磯者のころ

2006年8月30日 (水曜日)

海面に出たのは亀ではなくて・・・。

前回の平田と同様に奄美の南部に位置する瀬戸内町の

古仁屋(こにや)と言う町がある。

ここはかつて、戦時中は海軍の軍事基地があったところだ。

「死の棘」の作者である 島尾敏雄 は この港町の対岸にある 加計呂間島 から
特攻した。
私の叔父もこの加計呂間島から板付け舟に爆弾を積んで沖縄に向け出港したまま二度と戻ってこなかったと祖母から聞いた。
その日は台風を避けて、古仁屋と加計呂間島の間にある瀬戸内湾に避難していた。
台風はまだ、目だった影響はなかったが、テレビの情報を基に近いこの湾に係留した。
避難している間は、漁具の仕掛けを作ったりして時間を潰すのだが、それもすぐに終わり
音楽を聴いたりして暇を潰す。
船底で、体を横たえていると、海の深いところから、低い振動が伝わってきた。
遠くを通る客船か若しくはタンカーか
聞きなれない音だ。
段々と近づいてくる。
甲板に出て、海面に目をやるが、台風の影響で、厚い雲に上空は覆われ、星ひとつさえ見えない。
じーっと音のする方に目を凝らしていると、なにやら海面から突き出ている。
それが、こちらに近づいてくるのだ。
このままだと船にぶつかると思いエンジンを駆け、アンカーを引き上げようと、オモテに走った。
するとその様子を見ていた親父が、「大丈夫だ、船にはぶつからないぞ。」と大声を上げた。
そいつは船の左舷30m程の沖合いを通り過ぎていった。
潜水艦の潜望鏡だった。
国籍はわからないが、こんな狭い海峡を潜水しながら航行するなんて、自衛隊ではなさそうだ。
以前、中国の 原子力潜水艦が、日本の領海を侵犯したが、
この国籍不明の潜望鏡の主はやはり中国だったのだろうか ?
磯者

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2006年8月29日 (火曜日)

イカ → イルカ と 続いてきたので

今日は 亀の 話を ひとつ。

中学生のころ 母方の祖母の田舎の平田(へだ)で夏休みを過ごすのが年中行事に

なっていた。ここは、島の南部に位置し、焼内湾のほぼ外洋に近いところにある。

平田には祖母がひとりで住んでおり、祖母の田んぼの仕事を手伝う為にその夏も

平田にやって来た。

夏休みの時期は農家は忙しい。

春植えた稲の苗が収穫を向かえ、稲刈りの真っ最中だ。稲刈りが終わるとすぐに田植えの準備を始める。奄美では、年に2回米が採れる。

朝早くから、田んぼの稲をかり、海岸に丸太でこしらえた架台に

刈り取った稲をほす。

ちょうど、その作業が終わるのが、午後3時ごろ。

年寄りたちは、家に戻り、昼寝の時間となるが、子供たちは

一回目の海水浴だ。

通常、奄美で海水浴をする場合、午後の3時に泳ぐなんてことは無い。

熱すぎるので、日が翳り始める夕方から泳ぐのが普通だ。

しかも、昼間泳ぐ場合は、Tシャツを着て泳ぐ。シャツを着てても日焼けする。

素肌だと、ダメージが大きすぎるからだ。

じゃあ、なぜこの時間帯に、泳ぐのかと言うと、日が暮れて涼しくなると

別の仕事が待っているからなのである。

つまり、この時間しか、自由時間が無い。だから暑くても海に入る。

30分程泳いだ後は、昼寝をして、夕方からの仕事に備える。

ここで仕事が早く終わった子供たちは、2回目の海水浴をする。

その日午後7時には、仕事を終え、食事も済まし浜辺に下りていった。

2歳年上の マツジ兄と海に魚釣りに行く約束をしていたからだ。

マツジ兄はすでに浜に下りていて、カイに磯箱 (いしょばこ・・ 釣り道具を入れた箱のこと) を通し、肩にかけていた。

彼はそれこそ5・6歳の頃から魚釣りをしていて、村の長老たちが認めるほどの漁師だ。

全長4m程度の木の舟に乗ると 彼は舟を沖に向け、ひざまで海水につけながら舟を押し出し、完全に水に浮かんだ事を確認すると、舟に飛び乗った。

彼はトモ(舟の後ろの部分)に座り、体の左側で、カイを漕いでいる。

私は舟のオモテ(前方)に座り、体の右側にカイを持って漕ぐ。

二人が相手と違う側にカイをもつのは理由があり、この方が、舵を操り易いのだ。

勿論後ろに座っているマツジ兄が舟の舵をとる。

舵といっても本当に舵があるわけで゜はなく、カイ一本で舟の進路を操るのだ。

村の正面の沖合いに 枝手久島(えだてくじま) がある 村の人たちはこの無人島の事を「イザト」とか「人形岩」と呼ぶ。

ちょうど島のシルエットが、人が横たわっているように見えるため子供たちの間では

もっぱら「人形岩」と呼んでいた。

人の鼻に当たる部分を目指し舟を漕ぐ。

海面にカイをいれる時、抜くとき、舟の周りは、青い光に包まれる。

夜光虫だ。 カイを海面に入れるたびに、この光は明るくなりそして消える。

舟の軌跡が青い光で描かれる。

幻想的なその光を楽しみながら、カイを漕いでいると、マツジ兄が、「そろそろ、屋頓(やどん)の岩が見えてきたので、舟の舳先を「阿室(あむろ)の街灯に向けるぞ」と言った。

彼は、目印にしている三点の交点をむすんで、釣りのポイントを記憶しているのだ。

やっていることは、GPS と同じことだ。 すごい、自然に、数学の座標の概念が身についている。そればかりか、それを生活に活用しているのだ。

小一時間も漕いだ頃マツジ兄だけが知っている釣り場に着いた。

5キロぐらいの石にロープを結びつけた簡単な、いかりを海に投げ入れた。

海面に、青い光が揺らめく。 水深40メートルぐらいだ。

さあ、釣りを始めるぞ。

以前から夜な夜な浜に下りて、集めておいたヤドカリが餌だ。

ヤドカリを石の上に置き、別の石でそれをたたいて割る。

裸になったヤドカリの脚の部分と腹の部分を手で引きちぎり、腹の部分だけを

針にかける。 頭と脚の部分はそのまま海に棄てる。

道具を入れてすぐにあたりがあった。

道具と言っても、カーボンの竿やリールなどは使わない。昔ながらの 木で作った、大きな糸巻きにテグスを巻きつけた簡単なものだ。

「クチナギ」だ。

フエフキ鯛の仲間で、口が伸びていて、唇と口の中が真っ赤なのがこの魚の特徴だ。

立て続けに二人で7匹ぐらい釣り上げてパタリと引きがとまった。

月が夜の海に ゆらゆらゆれて写っている。涼しい風が山の方から水面を伝わってくる。

気持ちいい。湾の外で折れている波の音がかすかに聞こえる。村の方を見ると人家の明かりが

黄色に小さく光っている。

しばし、心地いい波に揺られる。空を見上げると、都会では、プラネタリウムでしか見られないような、満天の星。

「ふうーーっ」

突然に、得体の知れない音が聞こえた。

あたりを見回す。

舟の縁に、何かわからないがいるようだ。

目を凝らしてよくみてみる。

何と、それは、海亀だった。

亀は、魚では無いため、えら呼吸はできない。

人間と同じように、空気中の酸素を吸っている。

亀は、呼吸をするために海面に上がってきたのだ。

私たちの舟を見ても動じることなく、もう一度息をはいたら、海中へと消えていった。

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「ふぁーーあ」

青○実(高校一年生の同級生)は大きくあくびをした。

中間だったか、期末テストだか忘れたが、テストが終わって休憩の為に、廊下に出てきた

彼は、あくびをしながら、大きく背伸びをした。

髪の毛は天然パーマで、井上揚水の頭にそっくりだ。

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廊下は、我慢していたトイレにいく女子や、試験が終わった開放感から、クラスの殆どが出てきていた。

彼の姿を見た女の子たちが一様に「きゃっ」とかいって、目を手で覆いながら足早に

通り過ぎていく。

何と、背伸びをした拍子かどうかは、定かではないが、ズボンのベルトの上から

亀が頭を覗かせていた。

この亀も、暗いパンツの中にいて苦しくなり、呼吸をするために、浮上してきたのであろうか。

しかし、この亀はでかい。

彼は、テスト中に何を考えていたのであろうか?

当然その科目の成績は悪かったはずだ。

ここで、目を覆いながら、逃げていった者に、指を広げて、目を覗かしていた女子がいた事を付け加えておきたい。

ほぼ事実ですが、関係者に迷惑が掛かるといけませんのでフィクションということにして於いてください。

磯者

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2006年8月23日 (水曜日)

名残り雪

みなさん、本日も無事に過ぎようとしているでしょうか?

さて、イカの話の次はイルカの話でもしましょうか。

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いつものように、船から釣り糸を垂れていると

突然のすごい引き。

これは、相当、大物だと確信した。

電動ドラム(楽器ではありません)のスイッチをいれた。

釣り糸が、海面から、同じリズムで 上がって来る。

この機械はなかなかに、うまくできていて

残りの糸が20mぐらいになると 巻き取るスピードが弱まり

自動的にストップするようにできている。

魚は、海面近くになると、銀鱗に太陽光を反射させ、

本当の姿より、大きくその体を映し出す。

小さいマンボウを釣り上げた。と、思ったら、

頭だけで50cmもある魚を釣り上げた。

「うん?」 よく見ると、釣り上げたのは、50cmもある頭だけなのである。

「ははーん。サメの野郎がウロチョロしているんだな。」

そう思った私は、仕掛けをナイロンのテグスから、

ステンレスワイヤーに換えて、サメを釣り上げる準備をした。

こんなに大きな頭の魚を食えるのは、6m強のサメしか考えられない。

私の推理はものの見事に外れた。

立て続けに釣り上げる魚が、頭だけなのである。

しかも、水深15mまでは確かに、魚が仕掛けにかかっている感触が

手に伝わってくる。

ところが船に近づくにつれて、突然軽くなる。

「これは、サメなんかじゃない。イルカだ。」

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「名残りー ♪ 雪がー 降るー時を知りー ♪」 歌なんか歌っている場合ではない。

イルカににらまれたら、悔しいが、人間は漁場を イルカに譲るしかない。

こいつらは、船のすぐ下で群れで待っていて、魚が深いところから

水面に上がってくるのをじっと待ち構え、目の前まで来たときに

その獲物に喰らいつくのである。

しかも、頭ごと丸かじりすると、自分自身が、釣り針に引っかかるのを知っている。

だから、見事に 頭だけを残すのだ。

しばらく釣るのをやめていると、 船を囲むようにイルカが遠くからこちらを観察している。

「人間様をなめんじゃネーゾ!。」

近くにあった鉄筋で作った錘をイルカめがけて投げる。

やつらは私の行動を冷静に観察し、投げられた錘の距離を測り、

錘が届かない距離まで、船に近づき、頭だけを水面から出しこちらを見て笑う。

「キキキ、キキ、キキキ。」 しかも 6頭ぐらいに 笑われる。「キキキ、キキ、キキキ。」

「へへへ、早く釣りをしておくんなさいよ、旦那 。」 

「そしたら、あっしらが、また食べてあげますんで キキキ キキ 。」

完敗だ。 

 

いそいそと、イカリを上げ、次の漁場へと いく以外に無い。

尻尾をまいて 船を走らせていると

からかうように、こいつらは 船と並んで泳ぐ。

時には見事に いっせいにジャンプをしたりする。

誰か水族館の人が 見えないところで笛でもふいているんじゃ無いのかと

思わせるぐらいに統率が取れている。

そのうち、船と一緒に泳ぐイルカたちの歌声が聞こえてきた。

「名残りー ♪ 雪がー 降るー時を知りー ♪ ふざーけーすぎーたー・・・・。♪」

とても・・・・・・・・・・・・・切ない。

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磯者

私はイルカの「名残雪」より かぐや姫の「名残雪」が好きです。

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目の前真っ暗

かみさんの風邪がまだ治らないので

エアコンを冷房にすることができず眠れない

どうせ眠れないならブログに記事でも書こうと

夜中に起き出して、こうしてパソコンに向かっている。

漁師のころを思い出して書いてみる。

奄美大島の北に「サンドン」と呼ばれる岩がある。

ここは、大物が釣れることで、内地(本土)からの釣り客に

人気のスポットだ。

この「サンドン」と「宝島」のほぼ中間の海域にイカリを下ろし

ウンギャル(ホタ)を釣っていた。

ちょうど季節は今頃、奄美では夏の真っ盛りだった。

魚の食いつきが、だんだん悪くなり、道具を上げて昼飯にでもしようかと

準備をしている最中にそれは起こった。

肌に刺さるような灼熱の太陽の日差しが突然消え、

「ブッシャーーッ」という、海面が沸き立つような音とともに

目の前が真っ暗になった。

いきなり、昼から夜に変わったのだ。

何が起こっているのかまったくわからない。

時間にして10秒足らずのことだったと思うが、

結構長く感じた。

「ボト ボト」 「パラ パラ」

何かが空から落ちてくる

「イカ だ。」

何百匹といういかが甲板に落ちている。

昼を夜に変えた犯人は 目の前に落ちているイカだったのだ。

信じられないだろうが、イカの大群が空を飛んで、船の上空を

覆いつくし、力尽きたやつが、甲板に落ちたという次第だ。

鳥は確かに空を飛ぶ。

トビウオも魚の癖に見事なまでに滑空する。

だけど、いかが空を飛ぶなんて、紙飛行機でしかありえない。

昼飯は当然イカの刺身と焼きイカ、そして、

イカ墨の汁(奄美ではマダ汁と呼ぶ 決してダをラと発音してはいけない)

にして、美味しくいただいたのは言うまでも無い。

磯者

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